おひさま

 

 気持ちの良い晴れた日のこと。
 目が覚めるような新緑に包まれる森を抜けたところにある、すこぅし不便な丘の上に、一軒の小さな雑貨屋がありました。
 その名も「AKASATO☆MADE」。
 白い壁に、赤い屋根。大きなガラス窓は、いつだって磨き上げられています。
 内装も白一色とはいかなかったようで、白い床壁。
 真ん中を陣取る、頑丈そうな大きな茶色のテーブルには、白のレースがかけられています。
 その上には、色とりどりの編みぐるみや銀細工が並べられています。
 明るくファンシーな小物たち。しかし店内は常に閑古鳥。
 そんな中で、いつものようにふんぞり返り、木の椅子に腰をかけている若い男が一人。

「あー、ムギタくん。茶を入れてくれんかね」
「……アッティ店長、少しは動いたらどうですか」
「ムギタくん、麦焦がしという菓子もあっただろう?」
「アッティ店長、太りますよ」

 小さな小さなムギタくんは、落ち着きなくウロウロしていた足を止めて、ふーっと息を吐き出した。
 そしてしぶしぶながらにも、奥の部屋に備えつけてある台所へと、白とオレンジのストライプの布をくぐっていく。
 アッティ店長は、木の椅子をきしませながら外の新緑を見て、まぶしそうに目を細める。

「あー、ムギタくん。ムギタくん?」
「なんですか、いちいち」
「緑がきれいな季節になったねぇ」
「仕事したらどうですか」

 大きな目をほそーくして、ムギタくんは奥へとひっこんだ。
 アッティ店長は口をとがらせ、文句を言おうと振り返りかけたその時、緑の中から一人の白いワンピースを着た女性が目の端に映り、緩慢な態度で立ち上がった。
 立ち上がればスラリと背が高く、黙っていれば好青年に見えないこともない彼。
 女性がこちらに向かって歩いている以上、この店が目当てなのだろう。
 ハイキングにしては軽装で、お嬢様風の柔らかいワンピースのすそは暖かだろう風に遊ばれて、ふわりと揺れる。
 アッティ店長は、間違いなくまっすぐ向かってくる彼女のために、ガラス戸の鍵を開けた。

「アッティ店長、お客さまですか!?」

 音をたてないように、そっと開けたはずだったが、ムギタくんは奥の部屋から目を輝かせて飛び出してくる。
 話し相手がアッティ店長しかいないため、ムギタくんは外から来るお客さまは大歓迎だった。

「ムギタくん、嬉しそうだねぇ」
「なに言ってるんですか、あったりまえです! お客さまですよ? ああ、いつ以来だろう」
「……それは、ちょっとおおげさじゃないかい?」
「ああ、これは大変! 上等なお茶を入れてこなくては!」
「ムギタくん、私にも頼むよ」

 気楽に言ってくるアッティ店長に、ムギタくんは下からジロリと見上げた。

「なにか売れたら、水以外を用意してあげます」

 その言葉に、アッティ店長はおどけるように肩をすくめ、嬉々として準備にとりかかるムギタくんを見送った。
 ガラス戸にとりつけられたカウベルが、音をたてて来客を告げた。

「あの、少しのぞかせていただいても、よろしいかしら?」

 戸を開けたものの、入ってもいいものかためらうように彼女が声をかけてくる。
 つばが広く、春らしい飾り花をあしらった白い帽子。明るい緑色の柔らかそうな巻き髪。鳶色の瞳は困ったように揺らぐ。

「ああ、どうぞお好きに見ていってください。売れたら私もお茶が飲めますので、ぜひ」
「アッティ店長! 恥をさらさないでください!」

 大慌てで顔を出したムギタくんに、アッティ店長は大丈夫とうなずいた。

「事実をのべているだけだから、恥ではないよ」
「それが恥だと言うんです! あ、コレこないだ町で仕入れた緑茶です。どうぞー」
「玉露かね?」
「……わかってて、言ってますよね?」

 小さなムギタくんと背の高いアッティ店長のやりとりに、女性客はくすりと笑った。

「じゃあお邪魔しますわね」
「ああ! すみません、内輪で盛り上がってしまって。ほらムギタくん、謝りなさい」
「あ、ごめんなさい……って、ふにおちないんですけど」
「ああ、ムギタくん、麦焦がしを忘れているじゃないか。お出しして」
「そんなに気を使わないでくださいまし」

 女性客は慌てて白く細い指を広げて横に振り、お気づかいなくと鈴を転がすような声で笑う。
 ムギタくんは、こんなことならクリームたっぷりのケーキを用意しておくんだったと、奥に駆け込む。
 それを見届けて、アッティ店長は彼女に声をかけた。

「それで、どのような物をお探しで?」
「あの、とても美しく大切な友人が訪ねてきてくれますの。一年に一度しかお会いできないものですから、なにか友人の証となるような物があればと思いまして」

 髪と同じ、緑色のまつげをそっと伏せ、彼女は嬉しそうにほほえむ。

「ふぅむ。ここはハンドメイドですが、たいした物はありませんよ。町にある感じの良いティーカップなんて女性には喜ばれると思いますがね」
「ええ……でもあちらは空気も悪いですし、少し行きづらくて」
「ああたしかに、私もこの店に戻ってくると、ほっとしますよ。少し時間はかかりますが、お好きな品を言っていただけたら、取り寄せますが?」

 アッティ店長の提案に、少しばかり考えたが首を横に振った。

「いいえ、いいえ。ここがいいのです。彼女が気にしていた、このお店だからこそ、喜んでくれるはずなのです」

 力強く言う彼女に、アッティ店長は首をひねる。
 そこまで言ってくれる女性ならば、一度は店に来てくれたことがあるのではなかろうか。と。
 しかし、こんな辺ぴなところにある店に、わざわざ冷やかしにくる人間はいないのだ。
 数年に一回というペースで来てくれる常連さんはたしかにいるが、そこまで気にしてくれるようなお客さまがいるなんて。と考えて、もう一度違う方向に首をかたむけた。

 そのようすに、彼女は申し訳ないように笑う。

「なにか。美しい彼女がさらに輝けるような品物はありませんか?」
「……それならば、銀細工などいかがかな」

 毛糸の小物たちが転がっている向こう側を指差す。
 彼女も興味深げにのぞきこむが、心を揺さぶられるような物は見あたらないとばかりに、かわいらしい声でうなった。

「お気に召しませんか。少し時間をいただければ、ご希望に沿う物を作らせていただきますが」
「いいえ、いいえ。違うのです。彼女はたくさんの宝石やアクセサリーを持っているので、その中に紛れ込んでしまったら、と思いまして」
「そうですか」

 飾り気もなく、清楚な雰囲気のあるあなたとは正反対のようだな。
 そうつけくわえようとしたが、アッティ店長はめずらしく空気を読んだ――わけでもなかった、麦焦がしを持ってきたムギタくんと目が合い、心を読んだかのようににらまれたのだ。
 無言の圧力に、アッティ店長は負けた。

「……その、後は毛糸で編んだような物しかなくてですね」
「色々と森の動物たちがいて、楽しいですわ」
「ですが、そんなにお美しいご友人さまには、さすがにお似合いにはならないかと」
「そうかなー」

 しょげてしまった彼女に、ムギタくんが棚からきれいな新緑色のハンカチを取り出す。

「ム、ムギタくん。ちょっと! それはまだ試作段階だと言ったろう」
「こんなにきれいに出来たんだから、売り物に出来るってぼくも言いましたよね?」
「しかしだな。作った本人がまだ自信をつけていないのだから、お客さまにお出し出来る物ではないのだよ」

 とつぜんのことに、アッティ店長は少々パニック気味にムギタくんが持ち出してきた物を取り上げようとする。
 しかし、彼女は目を輝かせて、白い頬を赤らめた。

「少し拝見させていただいても?」
「ほら、アッティ店長。お客さまがのぞめば、それに答えるのが商売人ってもんですよ」
「だから、そうまでして売りたくないって、何度言ったらわかるんだね」
「……そうまでして売らないと、いつまでたってもそこらでつんだ野草の塩スープからのがれられないんですよ! ぼくは米が食べたいんです」

 きっぱりと言い切るムギタくんの言葉には逆らえない。
 なぜなら、アッティ店長もそろそろ肉が食べたかったのだ。
 しぶしぶ横によけると、彼女はそっとかがんでムギタくんからハンカチを大切そうに受け取った。

 彼女の髪色に似た、鮮やかな新緑色に染めた柔らかく肌触りの良い布地。
 そのまわりをふちどっている豪華なレースは、新緑の葉が重なりあう色合いに似ている。
 そのレースのところどころには、透明なビーズが一緒に織り込まれ、朝露のような輝きを見せていた。

「これを、売っていただけませんか?」
「いいですとも!」
「いやいや、待ってくれ。ムギタくん。これは試作と言ったはずだよ? 値段など決めているわけないじゃないか」

 ついぞ見せたことのないような真剣な顔で、アッティ店長がムギタくんを制する。
 さすがにムギタくんも、少しだけ考えて、うわめづかいで見上げながら口をとがらせた。

「それも、そうですけど。でもこちらのお客さまがプレゼントする品物としては、これ以上の物なんて、ここにはないですよ」

 背の高いアッティ店長がきゅうくつそうに身をかがめ、小さなムギタくんがつま先で立ってヒソヒソを耳打ちをすると、アッティ店長はうなずいた。

「それはわかっているよ。だから、こうしよう」

 おもむろに立ち上がり、ハンカチを握りしめている彼女にほほえみかける。

「あなたの言い値で、お売りしましょう」
「ええ? いいんですの?」
「よかーないです!」

 ムギタくんが慌ててアッティ店長のむこうずねを蹴り上げる。
 下手をしたら、米が食べられなくなるかもしれない。
 こちらの言い値で買ってくれそうなお客さまだというのに。
 しかし、アッティ店長は痛みを堪えて、どうするのかと先をうながす。

「では……ムギタさまでしたかしら?」
「は、はい?」
「その。お米はいくらくらいするものなのかしら」

 彼女の言葉に、二人は顔を見合わせる。
 絶好のチャンス到来。
 ムギタくんの熱い視線に、アッティ店長は苦笑してうなずいて見せた。

「ええと、今の相場は五百メベルです」
「ちょっと待て、ムギタくん」

 目を輝かせて言うムギタを、さすがに止めた。

「なにをキロ単位での値段を言っているのかね。さすがに気がとがめたよ?」
「いいえ、大丈夫ですわ。でもお金は持っていませんの」
「……は?」

 二人は仲良く、目を丸くして口をあんぐりとあけた。
 そのようすを見て、彼女はポケットから美しく輝く琥珀と呼ばれる石を取り出した。

「これで代用できないかと思うのですが」

 アッティ店長の細く骨ばった手に乗せられた、見たこともない大きさの神秘的な色を持った琥珀。
 見紛うことなき、本物の輝きを持った石だった。

「疑うようで失礼ですが……これを、どこで?」
「私の昔からのコレクションですわ。なにか問題でも?」
「ないですとも!」
「ムギタくん……まあ君の気持ちもわからんではないが、これは重要なことなのだよ」

 そんな言葉に、ムギタくんはフーッと息を吐き出して、いらだちをあらわした。

「こんなにも大きな琥珀は、世にはなかなか出回ることがなくてね。盗品であるという可能性があるのでは? と思ったものですから」

 明るい店内に、静寂がおりるかと思いきや、彼女は一瞬きょとんとしたものの声をあげて笑い始めた。
 よほどツボにはいったのか、なかなか収まらないその声に、アッティ店長はムギタくんとアイコンタクトを交わし、小さく首をすくめる。

「ああすみません! まさかそのように考えられるだなんて、思いもよらなかったものですから」
「いいえ、なんだかおかしなことを言ったようで。この鑑定書とかはお持ちで?」
「ありませんわ。だって裏山からいくらでもとれますもの」
「……このサイズが?」
「ええ」
「ゴロゴロと?」
「そういうとれかたではありませんけど、まあとれますわ」

 アッティ店長は、我が耳を疑った。
 たしかに場所によっては、あってもおかしくはないのかもしれないが。
 黙り込んでしまった彼に、彼女がのぞきこむようにして声をかける。

「もしこれで足らないようでしたら、また後でお持ちしますわ」
「足らないなんてことは、絶対にないです。ですが……」

 はたして、無事に金に換金できるだろうか。

 ふたたび黙り込むアッティ店長に、しびれをきらしたムギタくんが同じところを蹴り上げる。

「……ムギタ、くん。私が怒らない人だと思ったら、大間違いだって知っていたかね?」
「考えすぎなんですよ! 売れないなら、加工してこの店で売ればいいじゃないですか! 何を考え込む必要があるんですか。くれる物はもらっとけってコトワザ知らないんですか?」
「そんなコトワザ、初めて聞いたがね」

 ふむ。と息をつく。
 コトワザはどうであれ、この美しい宝石をビーズで囲ってペンダントにしたら、客寄せになるかもしれない。
 とりあえず、デザインのイメージ作りと称して冷やかしに行っている顔見知りの宝石商に、見せてもいいかもしれない。

「いいでしょう。こちらとしてはもったいないほどですが、本当によろしいのですか?」
「ええ! このハンカチをプレゼントしたら、きっと見るたびに私を思い出してくれるかもしれませんし。なにより、この色の物があるということが嬉しいのです」
「そこまでおっしゃってくださるとは。もしよろしければ、お名前を刺繍しますよ? 一番きれいな箱にお入れしましょう」
「まあ! では、名前ではないのですけど、木の刺繍を小さく入れてくださいません?」
「かしこまりました」

 彼女からハンカチを戻してもらい、メモ用紙に手早くイメージした木のデフォルメを描き、彼女に見せた。

「こういった形で、黄色の細糸で縁取るくらいにしたら、この色合いには映えるのではないかと思うのですが。いかがですか?」
「ええ、ええ! そうしてください」

 アッティ店長が針山から一本の長い針を取り出し、細い黄色の糸で右下に刺繍する。
 そのようすを、彼女とムギタくんは息をのんで見守った。
 ゆっくりと確かめるように動かす手に見入りながら、ムギタくんはため息をついた。
 いつもおかしなアッティ店長が、この時ばかりは別人のように見え、尊敬の念が生まれるのだ。
 一針一針、大切に縫いつけていく作業に、彼女の想いも一緒に縫いつけているようで心が震える。

「簡単で申し訳ないが、これでよろしいですか? どうぞ正直に」

 その声に、二人は現実に引き戻された。
 彼女は声にもならず、ただ何度もうなずいていた。

「ムギタくん、包んでくれたまえ。ああ、久しぶりに集中したら甘い物が食べたくなったよ。茶もついでに入れてくれんかね」
「……だいなしだ」

 ハンカチを受け取り、ポツリとつぶやいて奥へ消える。
 首をまわしながら、アッティ店長は裁縫セットを机にしまった。
 彼女は嬉しそうに礼を言う。

「ここに来て、本当に良かったわ。彼女が気にしていただけのことはあったもの」
「そのことなのですが、ご友人さまはいちど来店されたことがおありですか?」
「いいえ。いつも通りかかるときに、気になるのですって」

 毎日、暇をもてあましている。

「いつも、ですか?」
「ええ、いつ通りかかっても……その、だれもお伺いしている様子がなくて、少し心配されていましたよ」
「それは、お恥ずかしいかぎりですが。だれかが通りかかることは、めったにないことなのですよ」

 ムギタくんが、緑色のレース編みされたリボンで飾られた、店で一番上質な箱を持ってくる。

「お客さまのご友人さまは、勘違いされてるんじゃないですか? ぼくが思うに、ここ二ヶ月ほどはだれも見かけたことないですけど」
「ムギタくん、ここ半年といっても過言じゃないよ」

 おかしな直し方をしてくるアッティ店長に、ムギタくんはあきれた視線を送った。
 飾られたプレゼントを受け取って、彼女は輝く笑顔を二人に向ける。

「ありがとう、本当にありがとうございます! またこちらに顔を出してもよろしいかしら?」
「もちろんです!」

 小さな小さなムギタくんが、目を輝かせてうなずいた。
 アッティ店長もうなずいて、彼女の香りに気がついた。

「詮索するようで、申し訳ないのですが。ご友人さまのお名前を伺ってもよろしいですか? いつかお見えになったときに、失礼があってもいけませんし」
「ええ、かまいませんわ」

 疑うことを知らない笑顔で、彼女は細くなめらかな人さし指を天井に向けた。

「……あの、大丈夫ですか?」

 常に上を向いて会話をしているムギタくんは、少々けげんな顔で彼女を心配する。
 彼女も困った顔でガラス戸に手をかけて、二人を手招きした。

「う! まぶしいっ!」
「……アッティ店長、吸血鬼じゃないんですから。少しは外に出て運動してくださいよ」
「そうは言ってもだな、用もないのに外になんぞ出られるか」

 そんなアッティ店長の言葉とはうらはらに、気持ちの良い風が三人の髪を揺らして通り過ぎていく。
 緑色の髪の毛が陽の光で透き通るように輝き、彼女は嬉しそう上を向き、さきほどと同じように指を空に向けた。
 振り仰げば、太陽光が目を焼く。

「私の友人ですわ」
「申し訳ない、おもわず目を焼かれて微妙に見づらくて」
「アッティ店長もですか? ぼくも油断しました」

 目を押さえる二人に、彼女は申し訳なさそうに手を戻す。

「私の友人は、太陽を運行しているのです。最初に言うべきでしたね、信じてはもらえないと思ったものですから」
「ああ。お客さまとして来てくださるなら、どんな話だって信用しますよ。ミモザの君」

 アッティ店長がそう言った瞬間、強い風が二人を包む。
 足元の草原を音をたてて揺らし、通り過ぎたときに、二人は痛む目をそっと開けた。
 そこにいたはずの彼女は、こつ然と消えていた。

「店長! どどどういうことですか!」
「ああ、彼女から素敵な香りがするなと思ってね。ミモザの花が満開のときの匂いに似ていたのだよ。だから、刺繍もミモザに似せてみたのさ」

 難しかったがね。と疲れたように笑う。
 いかにも当然とばかりに言われ、ムギタくんは口をとがらせた。
 それを見て、アッティ店長は苦笑する。

「こんなところに店をかまえているとね、意外なことなど日常茶飯事さ」
「……ひょっとして常連の人たちも、人間じゃないとか言わないですよね」
「どうだろうね。まあいいじゃないか、気に入って来てくださるなら、誰だってお客さまだろう?」
「どんぐりとか、シイの実とかがお金入れの中にあったときがあるんですが、それが理由だったんですか?」
「まあね」

 おひさまの光に耐えられないモグラのように、アッティ店長はそそくさと店内へと戻っていった。

「……店長のいやがらせだと思ってた」

 そうつぶやいて、ムギタくんも少々気を落としつつ店に足を向ける。
 暖かい風が頬をなで、葉を揺らす音が優しく感じた。
 嬉しそうにハンカチを見ていた彼女を思い出して、ムギタはほほえむ。
 誰でもいい。あんなダメ店長でも、作品たちを認めてくれるのなら。
 みんな大切なお客さまなのだ。

 おひさまの光に、AKASATO☆MADEの白壁がいっそう白く輝く。
 不思議なことも、なにもかも。
 わけへだてなくおもてなしするこのお店。

 いつでも暇な二人が、てぐすねひいて待ってます。

 

  

 

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