天宮華月さまから頂きました♪ 月明かりに、寄り添う牙より『カラス』です♪

天宮さまブログにて、1万ヒット記念で募集があった際に

描いていただいたイラストです。

中性的で、でもどこか力強くて。なによりもカッコイー!!!

挑戦的な眼差しが、それでも少し子供っぽい雰囲気もあり

楓父とケンカしてる所を思い浮かべると、ほほ笑ましくなってしまいます♪

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 「あ、ラッシー! 来てくれたのね!」

  楓によく似た女性が、黒い扉から浮き出たカラスに笑顔を向けた。
  その明るいほほえみに、顔を背けながら、黒髪の一部を青く染めた頭を無造作に掻く。

 「……あー、庚。そのあだ名だけは、どうにかしてくれよ」
 「え? 気に入らないかしら」

  困ったように首をかしげれば、黒い長髪がさらりと肩から滑り落ちる。
  庚(かのえ)と呼ばれた女性は、そっぽを向いたカラスの顔を追って、下からのぞきこみ、表情豊かに笑った。

 「照れてる」
 「人間相手に、照れるもんか! 俺は忙しいんだ、用件があって呼んだんだろう。何もないなら、帰るっ」
 「あ! 待って! 重要な話があるのよ。大切、よ?」

  そう言って、庚は彼が逃げないように着物の袖をつかんで離さない。
  しょうがないな、と少しばかり赤くなった顔を反対側にそむけながら、彼女の引っ張る方向へと足を向ければ、そばに控えていた男の手刀によって彼女との繋がりを断ち切られた。

 「庚、手が汚れただろう。洗ってきたほうがいい」
 「ジョッシュ、その言い方は失礼よ」
 「庚。手が腐ってもいいのか!」
 「腐るわけないだろ! お前が……そうだ、お前が一番、汚い!」

  二人の汚い罵り合いが始まれば、何度目になるだろうため息を吐き、二度手を叩く。
  その音に難しい顔をしながらも、二人は揃って口をつぐんだ。

 「静かに! 今日のラッシーは、私のお客様なの」
 「そうだ。かの……いや、その女が呼んだんだ。お前なんかに構ってる暇なんてないんだよ」
 「ジョッシュ、お願いしてた用意は終わった?」
 「ああ、すべて用意した。和風の壁紙は庚の黒髪が映える物にした、少しばかりオプションも用意しておいた。気に入ればいいが」
 「え、私? えっと……黒に映えるなら、いいかしら。ラッシー、こっちに来てくれる?」

  一人うなずきながら、カラスに右手を差し出す。
  かなり動揺して、カラスは真剣な顔で生唾を飲み込みながら、恥ずかしくなるほど震える手で、庚の白く細い手をつかみ――かける前に、またしても先に彼女の手をつかむ大きな手。

 「庚、こちらに用意した。青黒いお前も、ついてくるがいい」
 「き、貴様ぁっ!!」

  カラスは怒りに任せ、おもわず消していた黒翼を発現させ、威嚇する。
  だが、庚の手を握ってたジョイスが、いつの間にか横に並び、彼の片翼を容赦なく抑え込んだ。

 「なんだ、怒っているのか。どうしてだ? 理由を言ってみるがいい」
 「う……くっ……」

  どうしたのかと振り向いて、まっすぐに見つめてくる庚と、目を細めて口の端を持ち上げ、上から目線の憎らしいジョッシュ。しかも、数枚の羽を千切られたのだから、始末に負えない。
  黒い瞳を動かして、交互に二人を見ていたが、結局は彼女の視線に耐え切れず、翼を消し、力なく肩を落とした。

 「……あー。やっぱり、帰る」
 「だ、駄目よ! 少し、少しだけだから。ね? お願い、ラッシー」
 「ラッシーって、呼ぶな!」
 「青黒男で十分だぞ、庚」
 「それはそれで、腹立つだろうが!」

  また騒ぎ出してしまった二人に、庚が小さな声で、仲良しなんだから。と呟けば、やめてくれ。と、仲良く言葉が返ってくる。

 「いいから。ほら、ラッシー。そこに立って?」
 「庚、用意させたのは、もしかして……」
 「ええ。ラッシー用に、よ? 私の黒髪に合う壁紙だから、ラッシーの黒さも引き立つわよね」
 「いや、こんな奴に似合うわけがない!」

  ジョイスが反対の声をあげる中、撮影のセッティングは進んでいく。
  苦虫を噛み潰したような顔で、カラスは重い口を開いた。

 「あー、何のつもりだ」
 「うん? 写真撮影よ。お友達の写真は、撮っておきたいもの」
 「……俺は、カラクリ箱なんぞに、写らないぞ? ヒトではないからな」
 「知ってるわ」

  さらりとうなずく庚に、カラスがさらに怪訝な顔をする。
  大きな一眼レフカメラを三脚に設置して、庚は爽やかに笑った。

 「でもね、ジョッシュから聞いてるもの。あなた達が写ろうと思ってくれれば、写れるんでしょう?」

  開いた口が塞がらない。
  カラスは、厳しい目つきでジョイスを見れば、動じる事なく睨み返される。
  その間にも、庚に桜の花がついた枝を手渡され、嬉しそうな顔でファインダーを覗き込んでいる彼女を、目で追いかけながらため息を吐くしかなかった。

 「仕方ないな。機会は一度だけだ」
 「ありがとう、ラッシー! だから好き!」

  庚からしてみたら、小さな頃から知っている者に対しての、何ていう事のない言葉だったのだろう。
  だが、カラスにとって、その言葉は何よりも望んでいたモノだった。
  自分が今、どんな顔をしているのか。よく、分からない。

 「かの……え」
 「うん、何?」

  カメラに隠れていた彼女の薄茶色の瞳が、カラスを捕らえる。
  口にした彼女の名前は、呼ぶだけでカラスの胸を揺さぶった。

 「庚、一度だけだからな」
 「いいわよ。ちゃんと撮るからね!」

  機械の箱に、また隠れてしまった彼女の視線は、それでも箱越しに伝わってくる。
  それが、嬉しくて。
  どうしてもほころんでしまう口元を隠すように、桜の枝を持ち上げた。
  機械越しとはいえ、まっすぐ気持ちを伝えるように庚を見つめるカラスを、ジョイスが面白いはずがない。
  だが、庚の楽しみを邪魔する事は、気が引けた。
  知らず握りしめていた手の中に、何かあると気づいた時には、カラスに向けてソレを投げつけていた。

  先程むしられた黒羽が、カラスに降りそそぐ。

  庚は、逃さずシャッターをきっていた。
 

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天宮さま、本当にありがとうございました!

 

 

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