『月明かりに、寄り添う牙』より、左から
ネキ・楓・内田です。
***
「ネキさん、なんかかっこいいね!」
「そうかい? あたしもそう思ってたんだよ。これで槙原様もイチコロだね!」
「……ころしちゃ、ダメだよ」
「あら、本当に命を狙うとか、そういう意味じゃないのよ?」
「そうなの?」
「ええ」
にこやかにうなずく内田に、少しだけ安堵した楓は、自分の持っているカードを見た。
「綺麗なカード。秋なのかな? 葉っぱが赤いし」
「……そんなことよりさ、あたしのカード。なんで猪なんだい! 蝶をよこしなよ」
「ええ? でも、蝶はこっちのお姉さんのほうが、似合う気がするよ?」
「じゃあ、楓のカードと交換だね」
「イヤ。だってこの柄、楓みたいじゃない?」
「いいから、よこしな!」
奪い取ろうと手を伸ばしたその時、セットされた金髪頭をわしづかまれる。
あまりの腕力に、ネキは顔を引きつらせた。
「あ、パパ!」
「私が目を離した隙に、どういうつもりか」
「じょ、冗談じゃないか!」
「パパ、ダメだよ。ネキさん、せっかく綺麗にしてるのに!」
「そうかい? 楓ちゃんが一番綺麗だよ! 花は楓ちゃんを引き立てるために存在するのだと、今わかったよ」
解放されたネキに、一部始終を見ていた内田が声をかけた。
「……なんだか、大変ね」
「これが、日常茶飯事だと言ったら。同情するかい?」
茶化すように肩をすくめ、内田に答えれば、彼女は困った顔で小首をかしげた。
「同情……というよりも、興味はあるわね。私の実験熱がうずくわ」
「……ああ、こっちも普通の人間じゃなかったっけね」
飽きたとばかりに、彼女たちから背中を向け、歩きながら腹を締め付ける帯をほどきはじめた。
***
ブログに載せていたおまけSSと同じ物です。
万が一消えたら切ないので><